編集って何よ
お役立ち情報・コラム「色・フォント」

色やフォントの使い方[編集系Tips]

色を使いすぎない

商業印刷の世界でカラー印刷というと、以前は「高価」というイメージがついて回りました。「黒一色では味気ないが、さすがにカラーにする予算はない」ような場合は、二色印刷がよく実施されたものです。ところが最近では、印刷物といえばカラーが当たり前になっています。昔と比べると、カラー印刷が特段高いということもなく、非常に安価でフォローしてくれる印刷所も出てきて、かなり身近になってきました。

またパソコンの普及で、一般の方も手軽にカラーものを作ることができるようになりました。加えて家庭用カラープリンタの普及もあって、どんどん身近になっていますね。

ところがそれに伴って、裏側の面が出てきているようです。つまりカラーが使えることで表現方法を増すことができるようになった半面、見づらい紙面作りをしがちになってきたということです。

余談ですが「半面」を「反面」と書く場合がよくあります。三省堂の『大辞林』では、反面を「別の面。一面。他面。多く副詞的に用いる。 『陽気な反面寂しがり屋でもある』」と解説しています。岩波書店の『広辞苑』でも似たような感じですが、「反対側の面」という意味合いが強く出されています。さらに『広辞苑』では、半面の方にも「相対するものの片方」という解説があります。これでは、どちらを使ったらいいのか分からなくなってしまいます。

一般的には「反面」と書く場合が多いでしょう。「良いこともある反面、悪いこともある」と表記します。しかし広報の世界のメーン辞書とも言える『記者ハンドブック(共同通信社刊)』によれば、これらはすべて「半面」と書くとされています。「反面」は「反面教師」などの特殊な用語にのみ使うとされているのです。だから新聞や広報の世界に長く住んでいると、どうしても「半面」と書いてしまうわけです。しかし社会通念としては「反面」を使っても、間違いではないと思います。

閑話休題。

カラーが手軽に使えるようになった弊害は、なんと言っても「色を使いすぎる」ことです。極端な例では「白い部分がなくなるまで色を使う」こともあり、それが美しいと誤解されている場合があります。

下の例を見てください。

色遣いの例

左右に並んだ二つ図は、全く同じレイアウトで、全く同じ文字と写真が掲載されています。違いは色だけです。それなのに両者は、全く違うもののように見えてきますね。色遣いによって、こんなに雰囲気が変わってくるのです。

左側は、一般の方がよくやってしまう例です。色が使えるとなると、さまざまな色を使わないと「色を使っている意味がない」と思いがちになるためか、やたらと多くの色を使います。しかし結果はご覧の通りで、一貫性や整合性がなく、見た目にもきれいではありません。

右側の例は、色の使い方を制限しています。一色だけではありませんが、緑系の色だけで表現しているため、統一感が出ていますね。

ということで、色の使い方に注意するだけで、見栄えがぐんと違ってきます。

フォントを使いすぎない

色と同じことがフォント(書体)にも言えます。コンピュータに初めから入っているフォントは、それほど多くはないですが、ちょっとした文書を作ろうと思ったとき、選ぼうと思うと迷うくらいの数は十分入っています。

せっかくいろいろなフォントが使えるのだから、見出しごとに替えてみようなどと、つい考えがちです。でもそれが間違いの始まりなんです。

下の図(レイアウト)を見てください。

フォント遣いの例

内容は全く同じで、文字の大きさもほぼ同じです(フォントによって同じ大きさでも小さく見える場合があるので、そのあたりは調整しています)。でも右と左では、雰囲気が違っていますね。

左は、見出しごとにフォントを替えた例です。一つの文書の中で、いくつかのフォントを使うことは悪くはありません。しかし左の例のように、統一感のない自由奔放な使い方をすると、読みづらくて困ります。また中見出しが全部違うフォントになっているので読む人が落ち着きません。これでは読みづらい紙面になってしまいます。

右は、大きな見出し部分にほかとは違ったフォントを使っていますが、中見出しは共通のフォントとし、統一感を持たせています。派手さはありませんが、安心して読める構成になっています。

とはいえ「奇抜なフォントを使うな」とか「フォントの数は少ない方がいい」というわけではありません。奇抜なフォントでも、例えば大きな見出し一点にだけ使うなどすると、とても効果的な場合があります。また大きな見出し部分に複数の見出しがある場合は、あえてフォントと大きさを変えることで、読みやすさを作り出すことができます。さらには、さまざまなフォントを使うことで、紙面を安定させるられる場合もあります。ただしこの場合は「違うフォントであっても見た目の整合性やバランスが良いものを選ぶ」必要があります。そのあたりは、実際に紙面上に置いてみて、試行錯誤するとだんだん分かってきます。

色もフォントも「あるだけ使う」姿勢は改めた方がいいでしょう。効果的に使えば、紙面をぐっと引き締め、美しくします。せっかく見やすくレイアウトをしても、色遣いを間違えると、結果は悲惨なものとなってしまいます。

以前、知り合いのデザイナーから、思い出話を聞いたことがあります。彼の失敗談でした。

「もうずいぶん前になるけど、全国版の雑誌に掲載するカラー広告を作ったときのことなんだけどね。レイアウトをバッチリ決めて、カラーチャート(色見本帳)と首っ引きで、文字にさまざまな色を付けていったんだよ。デザインをしているときは『完璧だ!』と思ったんだけどね、発売された雑誌を見たら、自分のデザインがすっげーダサかったの。あれ以来、文字に多色を使うのはやめたよ」

私がこれを聞いたのは、まだまだ若いころだったので「へー、そんなもんかねえ」と思いましたが、今になって思い返すと確かにそうだなと思います。「過ぎたるは、及ばざるがごとし」ですね。